話すことはないけど会いましょうって春の宵
排気ガスを浴びて終わらない夢を見る
巻き上げるダストが突き刺さって涙目
ちょうどよく覗き込む見知った顔がにじむ
行くあてもないまま歩きましょうって春の宵
境目をなくして淡い夢に落っこちる
ほとんどもう破綻している世界において
いまだ狂わずにいるその影が
揺らいでばっかのこの道の先で
どれほど光だったか知れない
話せば話すほど溺れていく春の宵
ひと挿し早咲きの八重の桜眺む
あれが枯れる頃答えも出るはず
きっと僕は引き下がることを選ぶ
澱んでばっかのこの瞳の奥で
どれほど思い浮かべたかなど言えない
せせらぐような声は喧騒を洗っていく
連れて行ってほしいと思う
かがり火のような熱は掠った手を焦がしている
今終わってもいいと思う
春の陽気に耐えられずに散っていく
僕こそ八重の桜かもしれない
揺らいでばっかのこの道の先で
どれほど救いだったか知れない
どれほど名を呼んだかなど言えない
話すことはないけど会いましょうって春の宵
きっとこれが最後のひとひらになる