神社の境内 通り抜けたら、駅まで続くあの坂道。
遠くで聞こえた君の声は、踏切待ちで掻き消された。
電車が通り過ぎてく音に耳を塞いでいた。
ひとりだけマスクをして写した記念写真も。
授業中、君がそっとくれたのど飴の切ない味も。
“さよなら”思い出だけが僕らを置き去りにして、
ただ過ぎてゆく時間の中で立ち尽くしていた。
いま目に映った景色すべてが、スローモーションになってゆく。
足りない何かを見つけられたら、大人になってゆけるのかな?
電車が通り過ぎてく音が胸に響いていた。
この遮断機が上がると僕らはまた進まなきゃ。
果てしなく続く坂道を足早に駆け上がってゆく。
“さよなら”巻き戻せない時間があるってことは、
そんなことはね、分かっている。分かっているから。
近くにあることさえも気付かず見過ごしたもの。
遠くにあると思い込んでいつしか失くしていたもの。
“さよなら”思い出だけが僕らを置き去りにして、
ただ過ぎてゆく時間の中で立ち尽くしていた。